篠房六郎『百舌谷さん逆上する』3巻

 お兄ちゃん あのね 僕は どえむに────なりたい

百舌谷さん逆上する(3) (アフタヌーンKC)

百舌谷さん逆上する(3) (アフタヌーンKC)

 夏休み終了編。今回で、百舌谷さんと樺島くん(番太郎)の関係に一区切りがつきました。
 すっかり百舌谷さん視点で話しが進んでしまいましたが、今回は彼女の両親役・美沙緒さんと達規さんがクローズアップ。二人が百舌谷さんを育てることなった経緯や、彼女とのふれあいの中での思いが綴られます。
 視点を変えて語られる、「すっぱい葡萄」と「死んだ猫」の話。
 百舌谷さんを「あんな危ない子、ウチの子と一緒の教室に置いとかないでよ!」と抗議にきたおばちゃんに対し、淡々と冷静に説得する達規さんはカッコイイ。
 最後は声を荒げちゃいましたが、あそこまで出来れば立派。世の中にはほんと、噛んで含めるように言い聞かせても理解しようとしなければ、理解しない輩がいるわけでして……。
 しかしなあ、「車にはねられて血まみれの、瀕死の仔猫」に愛情を感じることを、異常と断じて理解出来ないと言うおばちゃんが理解出来ない。可哀想とか助けたいとかいう思考に流れないのか? とも思ったけれど、ツンデレサディズムをごっちゃにしているあたり、相当バイアスかかっていたんでしょうなあ……。
 まあともかく、この巻で百舌谷さんは、ようやく二人を「親」として受け容れることができたのでしょう。一方で、番太郎に今まで助けられていた、「寄りかかっていた」関係を清算し、新たなステップに昇ろうとしている。
 ああ、いい話でした。
 ……変態ドMがそこに加わってカオスになっているのが、一筋縄でいかんところですが。とうとうカバー下にまで……!