RPGツクール2003『ゆめにっき』

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 2004年に0.00公開、最新板0.10を2007年に公開したフリーゲーム
 内容はまあ、LSDプレイステーションソフト。ぬえやは未プレイです)やMOTHER(ファミコン)、あるいはMOON(未プレイ)に似ているとよく言われていますが、実際MOTHER2っぽさというか、糸井重里ティストが漂う作品です。マザー2が分かるなら、「全編マジカント×ムーンサイド」な雰囲気ってとこですか。任天堂のダークサイド全開と言うか。あとは、ケータイアプリですが、「主人公が最初からあっちの住人の『歪みの国のアリス』」とか。
 ストーリーというものは無く、ただ主人公の少女「窓付き*1」を操作して、暗い雰囲気の夢世界を彷徨うだけ。夢の中にはエフェクトという、夢の中だけで使える特殊効果があり、これを夢世界探索に役立てたり、あるいは主人公および世界のグラフィック変化を楽しんだりしながら収集します。これを全部集めて、扉の世界(あらゆる夢世界へのリンク、出発点)で卵に変えて捨て、「つねる」で目を覚ますとクリア。でも達成感はないっつーか鬱エンド。
 一切自室から出ない主人公(出入り口をチェックすると首を振る。出られないのか、それとも出たくないのかどっち?)。
 夢の中というメルヘンそうなシチュエーションにも関わらず、イドの怪物満載と言わんばかりの、暗い夢世界の数々。
 ほとんど何も説明はなく、プレイヤーは夢世界のオブジェクトやイベントから、「窓付き」の境遇や心理を推察します。
 私がプレイした限りで想像できるのは……。
・三人の親子(ピクニックしている鳥人間・トイレの傍で夜景を見る人々・モノ子・★しんごう★を手に入れられる死体・白黒世界を飛ぶ男女の生首・ギロチン):窓付きの家族? それが交通事故に遭った? 誰か(窓付き?)の信号無視が原因で。で、両親は首が千切れて即死とか。ただ、鳥人間が窓付きを抑圧する誰か(親とか)だったら違うような……。というか、「死体」は首が繋がっているしなあ*2。モノ子の頭や腕から、余分に手が生えているのは、交通事故でグロいことになった遺体を窓付きが直視できず、ああいう変換にした気がしますし。
・ポニ子(電気を消す→ウボァ! ウボァに飛ばされる異世界の空):電気を消すってことは性的イメージだったりしないですかね……。「おいおい百合にもっていくなよ」と最初この案は却下したが、ウボァに飛ばされた後の世界に見える不気味な絵を見ると、その可能性もアリな気が。襲いかかる怪物。あと、★ブロンド★はポニ子と関係あるのかも。
・セコムマサダ先生:先生ってのはネットでの呼称だけど、窓付きの現実での先生だったりしないだろうか(家族に相当する人物は上で既に出ているっぽいし)。あるいは、父親か母親の、また別の分身とか? あと、彼はピアノを弾いているけど、窓付きがエフェクトで笛を吹けることと関係あったりしないかな……。ふえ=リコーダー、先生=音楽の先生(または音楽を生業にする親)。現実ではふえが吹けなくて先生(の原型になる人物)とうまくいっていなかったけど、夢の中ならなんでもできるとゆー。
・目:なんかやたら目をモチーフにしたオブジェクトが多いけど、これは窓付きが視線恐怖症だってことだろうか? あるいは、やましいことがあって、「見られたくない」と思っているのか。または、誰かに見られている(常に監視される生活)という現実でのストレスを反映しているのか。とにかく「目」に対して非常にネガティブなことだけはハッキリしているかと。
・★ほうちょう★:これは窓付きが誰かを刺殺したのか、刺殺されちゃったのか、刺殺したいのか。どれとも取れるので謎いっぱい。
かまくら子:ポニ子と違ってあまり話題にならないが、彼女は一体……。仲良いのかと思いきや、普通に刺し殺せるし。ねこを使うとちょっと反応したけど、目を覚まさないんだろうな、あれ……。
 うーん、このままでは考察記事になってしまうなあ(しかも何番煎じっぽい内容だし)。閑話休題
 とにもかくにも、ダークでサイケで異様な世界観に、波長のあう人はどっぷりはまれること請け合いです。ニコニコやユーチューブにプレイ日記などがあがっているので、それを見てみるのもいいでしょう。私はニコ動でプレイ日記を見たんですが、それさえ見ればいいやーと思ったら、実際にプレイしたくなってランタイムとか落としてきました(笑)。
 マップはやたら広大で、ループしまくりで、もうどこにも辿り着けないんじゃと思いながら移動して、やっとこ次へ辿り着けたりと、まあ中々苦労は多いゲームです。自転車ないと絶対きついし。でも、あの世界を延々彷徨うのがなんか快感ですね。
 耳鳴りのような、不安をあおるBGMの数々。
 作者の精神が心配になるような、鬱病的デザインのイラストやオブジェクトのデザイン。
 ほとんどの世界は、退廃的で虚無的で、訳の分からない恐ろしさと寂しさに襲われます。
 けれど、その不安定さがどこか安心さをくれるというか、なんですかね「落ち込むことの気持ちよさ」を思い出させてくれる感じ。「おれなんてどうせひとりぼっちなんだよー。うわーん」みたいな、いじけて膝抱えてぐすぐすうじうじしている、自分の中に閉じこもって丸まって、ずっとそのままでいたくなるあの誘惑。探索する夢世界の光景は、そういう雰囲気があるなあと思うのです。
 そんなわけで、ぬえやは当分このゲームにどっぷりで、抜けられそうにありません。はい。主人公の部屋にあるファミコン風のミニゲームができる『NASU』を始め、かなり大量の小ネタが仕込まれているところもポイント。

*1:固定名。服の模様が由来とも、『ジョハリの窓』が関係しているとも言われている謎の名前。

*2:余談だが、あの死体に★ねこ★を使うと動くのが面白い。