片岡人生、近藤カズマ『デッドマン・ワンダーランド』1〜2巻
……明日は死刑になっちゃうんだけどなあ…
デッドマン・ワンダーランド 1 (角川コミックス・エース 138-8)
- 作者: 片岡人生,近藤一馬
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: コミック
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デッドマン・ワンダーランド 2 (角川コミックス・エース 138-9)
- 作者: 片岡人生,近藤一馬
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/12/01
- メディア: コミック
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作者はエウレカセヴンのコンビだそうで。俺は漫画版もアニメ版も知らないのですが、エウレカ。
物語は、東京が大震災により壊滅して10年後の世界。突如現れた『赤い男』にクラスメートを虐殺された14歳の中学生・五十嵐丸太(ガンタ)は、その犯人として死刑判決を下され、完全民営化刑務所『デッドマン・ワンダーランド(略DW)』に投獄されてしまう。激変した自らの現実に絶望しながら、謎の少女シロとの出会いを経ながら、『赤い男』を捕まえ、冤罪を晴らすことを誓うガンタだったが、DWにはとんでもない秘密があった……。
とまあ、中々衝撃的開幕のこの物語、基本は熱い少年漫画/少年の成長物語的面を持ちながらも、エグさ、グロさ、悪趣味さのある作風になっております。まあブラックというよりは、熱血とかそういう「光」を際立たせるために「闇」を際立たせた、予定調和の暗黒ってやつですかね。会議室のグロテクスな調度の数々とかよいです(しかし綾取りしながら接客する悪役って初めて見たよ)。
デッドマン・ワンダーランドは特殊な刑務所──東京復興のための観光事業をおもな刑務としているのですが、多くの理不尽に支配されています。「強い」囚人は取り巻きを引き連れて弱者をいたぶるし(あのお爺さんは深刻に可哀想でした。特別懲罰房ってどんなだろう…)。障害物レースでは人死にがでまくりでした。
しかし、レビューを見た時には、「死刑囚が自分たちの死を売り物にするショウを毎日生き残って、金(カストポイント)を稼ぐ、過酷な刑務所」の話だと思ってたら、違うみたいなのでちょっと残念。更衣室でのやりとりや、死体処理班がうんぬんってあたり、普段は死人が出ることはないようです。
ただ、死肉祭(カーニバル・コープス)/『実験』での敗者の取り扱いは無残ですね。せめて麻酔使えよと思ったが、眼球抉り出して昂奮する女医さんからすると、そういう趣味の方にしか思えません。ガンタの部屋に挨拶に来た面々も、既にどっかなくなっていたりするんでしょうか。マスが『サタニスター』のストーン・ビスケットに見えた……。あのメンツだと、ヒタラじじいが一番気になります。32年間寝てなくて、常に「我が娘」と会話している謎のじいさん。一人だけ本名不明だし。水名月ちゃんあたりは、羊くんと関係ありそうですが。うーん三巻が楽しみ。
他のキャラですと、横暴かと思いきや、軍人のごとく職務に忠実な姿か格好いい看守長マキナ(Gカップ)、何かたくらんでそうなキツネ系悪役の玉木なども魅力的。あとはアルビノヒロイン・シロの謎が興味深いですのう。
シロは見た目も性格も作中の舞台からは浮きまくっていて、そもそも囚人ですらなさそうなのに、なぜかDW内に存在しています。1巻冒頭のカラーページでガンタと彼女が遊ぶ幼い日の光景があり、ガンタは忘れているけど二人は幼馴染みの模様。友達が「死にたい」と言うから殺そうとしたり、「友達は殺さない」というガンタの言葉を固く信じたり、妙に無邪気で素直。浮世離れしまくっていて、殺しても死ななさそうな感じがします。まあ普通に怪我したりもするんですが、妖怪とか妖精さんってのに近い。いきなり暴走したかと思えば可愛く笑ったり、何考えているのか分かりにくかったり、ある意味この作品の「狂気」を象徴する存在であるかのようにも思えます。なんか原罪(ラチッドエッグ──悲惨な卵?)と関係ありそうだし。
1巻はおもに世界観の説明に終始していますが、2巻からは原罪から派生した? 「罪の枝」の能力者・デッドマンの存在が明かされ、3巻から本格的に能力者バトルへと入っていきそうですね。その過程で様々な謎も明かされるのでしょう、ふふり。OPでガンタとシロが遊んでいた施設はいったいなんなのか。そこでピアノを弾いていた保母っぽいおねーさんの涙の意味は? シロは「ただの子供」ではなかったようだけれど……さてはて、興味は尽きませぬ。