ホラーM4月号

 遅まきの感想。いやもー、小説とかにかまけて本買う暇もありませんでしたわ。
・すっくと狐(吉川うたた)
嘆きの天使(熊谷蘭冶)
 前回ピーッされたシュヴェスター・ドロテアは地下牢へ移され、ジークリンデは心を凍りつかせた彼女の世話を任される。贖罪のため、筆を折ることを誓った彼女は、美しい友人ヘレーネをも遠ざけるが、ドロテアがたった一言だけ漏らした言葉に従い、ドロテアの姿を描く事を決意する。
 主人公ジークリンデの語りは文学的・哲学的で、読者をどっぷりと作品世界に浸らせてくれる。「壁に見入るなんて暗闇の中で瞠目するようなものじゃありませんか」とかね。ドロテアを描くために芸術家たる葛藤へ身を焦がすジークリンデですが、その果てにもまた、次なる破滅が訪れる。
 ヘレーネがヴィルヘルム叔父へ送った絵も、後の波紋を呼んでくれそうな予感がして、先が楽しみ。単行本にもなるようなので、ぜひゲットしたいもの。
・まがまがし(駒宮心羽)
 いい話になりそうでそれをひっくり返す、毒のある作風は相変わらず。とことん「自分」を貫く主人公は潔いですね、男の子を後ろからやっちった時は「おいっ」と思ったもんですが、「私は死ぬまで妖物だっ」て突き抜けているのでOKだなや。出てくるなり死んでしまった新キャラは、彼女の行く末を暗示して、何やらハッピーエンドがこない予感……。男の子の主張は分かるんだが、この作品的には、「結局そっちが正しかった」みたいになるのは、なーんか違うと思うんだよね。最後まで突き抜けてほしいもんです。
・お姫様クラブ(曽祢まさこ)
 小さいころの思い出と少女趣味を捨て切れず、大人になった女が、やがて老けていく。それでも夢は捨てられない、「鬼気迫る女心」という話。なんつーか、面白かったけどホラーやのうてレディコミとかの話ですよね、これ。未必の故意のあたり、もうちょっと外道に描いてもよかったんじゃないかな。
 一人の女性の生涯を追って、「動機」の積み重ねを描いていくさまは丁寧。ただ、プリンセスクラブの案内に来た人が同じ顔だったのはなぜ? てっきり、クラブに凄い恐ろしい秘密でもあんのかと期待したのに、普通の商売屋のようで残念。
・猫闇(ワタナベチヒロ)
 前回、前々回の勢いはどこへ……。
 猫いっぱいなのはいいんですが、話が物足りない。っていうか、苛められた猫達が人間に逆襲するんですが、猫好きで世話していた男の子にほだされて引き下がり、「だが忘れるな、お前達の命は我々が握っているぞ。フハハハー」と去っていったりでもうグダグダ。人間が逆襲される系の話は、容赦なくグロく襲っていく怖さが欲しいんだけどなあ。この人じゃ無理か。
ミスミソウ押切蓮介
「ちょっとタイムっていってんだろ──が!!」

 前回、初めての苦戦とか思いきや完勝しててびっくり。春花にはどんどん復讐を進めて欲しかったので、苦戦はほんとは歓迎出来なかったので嬉しいです。ただ、ボウガンとモデルガンの二人がかりを相手に、まったく無傷なのが恐ろしいですが。ああ、彼女はもうただの女子中学生ではなく……復讐のための殺人機械なのですね……。一言もしゃべらないし。
 今回も春花様は凄いのです。ハサミを鼻に突っ込みます、モツも撒きます。今回は池川君のルサンチンマンが暴かれましたが、真宮君が放置だなあ。池に落ちたから、久賀君のときみたく、次号でモノローグとかやらんだろうし。……は、そういえば相場がまた一コマも出てない。
 しかしミスミソウのグロは独特ですな。壮絶なイジメと、家族を殺された事への復讐なのに、爽快感はない。それが悪いのではなく、むしろ復讐を成し遂げていくほどに、哀しさ、後味の悪さが積もる感じが、他にはない深い魅力を出している。
 さて、次号は二人が返り討ちにされた事を知って、流美はどう動くかな?
・妖、棲まう(寿歩)
 いじめられっこが、たまたま見つけた怪奇現象を利用していじめっこを殺すが、自分も──という話。
 割とある内容で、オチも読めたので特にどうとも……。絵が少し見づらかったかな。
もののけ草紙(高橋葉介
 なんでまた続き物!? と思った今回。
 今回出てきた新キャラが、手の目と顔の区別がつかなくて困った。で、今回の手の眼は、前よりぐっと大人っぽく色っぽくなっちゃって。まあ。
 雰囲気は大好きなんですけど、今回はちょっと微妙だな……。
・蛇巫、守り人(わたなべまさこ
 絶滅的な絵の古さだが、一般ではあまり見かけないこういう種類の絵も好きだ!
 絵が古いなら語り口もなんぞ古さげ。うむうむ。で、話はわりとある感じかな。兄ちゃんだけ残したのは、家主だから? そこだけよく分からんかった。
・デリバリー彼氏 90分の恋人(三条友美
 基本不条理・突拍子もないのが持ち味の三条さんですが、今回はページ数があったせいか、割とストーリーがあったような気が。
 ええとあの人形は、本当はあんな不気味な造詣だけど、何かのきっかけで人間に見えるとはまっちゃうってことか? あと、「連れて行く」って……なんで、どーして。って、考えても仕方がない(笑)。
・地獄入門(霧町こひよ)
 地獄の鬼が、黒マントをつけたピッコロさんに見えた。
 話はちょいと教訓モノめいていて、うーん。地獄の恐ろしさをもっと強調して欲しいし、描写してほしいんだが、この小奇麗なライトさじゃなあ。こう、ホラーに必要な毒やクセがない。単品としてはわりと好きな絵だけど、この誌面では物足りない。
 あと、この人前に、呪いの花束の話描いてたんじゃないかな。あれよりは面白かったと思う。
・ゲーム(御茶漬海苔
 うーん。この人はやっぱり、昔のほうが面白かったなあ……。
 話自体は怖いんですけれど、描き方がね。あと、自称親友少女の家って、前も同じやつ出てこなかったっけ?
・辻占売(池田さとみ
 この人の絵とか雰囲気が好き。ただ、目の見えない未信くんの「似合ってるよ」発言はアウトではw
 マリちゃんが可愛いかった。ボケ老人と娘さんが物悲しくほのぼのしてた。うむ。
・サタニスター(三家本礼
 まさかの投げっぱなしジャーマン。
 前回の墓井田・マジェンカが全て無意味になる超ド展開でありんす。なんぞこれー!
 次回あたり最終回になっても驚かないというか、最終回になっていなかったらむしろびっくりってなぐらい、もの凄い速さで話が進展。今回の内容だけで、3話は使わないといけなくないかい? 人形を壊そうとした幽骸の結末は予想どおりとしても、それはまだ先でいいでしょがっ。
 伊看崎はあっさり復活してるし(まあそれはどうでもいいか)、いずみとサタニもんはいきなり瀕死。幽骸にふっとばされるサタニスターのコマがかなりギャグで萎えればいいのか笑えばいいのか。あ、あと作者とサタニもんが雷崎刑事の件を覚えていて感動。だがそれだけに、余計打ち切り終了が懸念されてならない。ひいいいい。
・薔薇のヴァンパイア(矢萩貴子)
 人を鞭打ちながら登場しつつ、巡回卿との対決でちょっとイイ人と思わせて、やっぱり第一印象ほぼそのままだったエデイ恐るべし。
 今回は彼が思いっきりサディストをカミングアウトしてくれやがりました。人間を弓矢の的にしたり、女性の手足を切って吊るしたり、やりたい放題です。しかし人が無残に殺されたり拷問されたり酷い漫画だなあ(笑)。作者、中世の拷問とかも詳しいのかしら。エディの所業に対する、周囲の反応とか(公開処刑って庶民の大事な娯楽でしたしね)。
 ただ、エディは単純に弱いものイジメが好きなんでなく、自分より強い者と命を賭けた戦いを演じたいようで、そこが興味深くもありました。
 にしても、矢を掴むシーンはギャグですね。ぱしっぱしって。
・E・N・KO・U(明智抄
 今回は母親視点だからか、前回のENKOUよりは切なさが少ない。
 ただ、今回は全体にスピリチュアル系への風刺がありましたね。そこに絡めた狂気とか、まあ少し分かりにくい部分もありますけど。なんかナチュラルなんだもの(笑)。「よく思ってやっているのに」とか、何かぜんぜん自分の行いに疑問がないんだもんなあ。深いすぎる狂気はもはや自然体ということなのでしょうか。