田中ロミオ『人類は衰退しました』2
「助手さん、ところでバナナを食べたあとはお約束があるんです」
「……?」
「それは必ず滑って転ぶというものです」
- 作者: 田中ロミオ,山崎透
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/12/19
- メディア: 文庫
- 購入: 27人 クリック: 715回
- この商品を含むブログ (318件) を見る
今回は、1巻のような妖精さんとの交流よりも、妖精さんが引き起こしたトラブルに主人公が翻弄されている体裁。妖精さんそのものより、主人公の描写にページが割かれているようです。
小さくなったりタイムスリップしたり、さすが妖精さん、ファンタジーになんでもありですね。
1本目の話では、小さくなった主人公が大冒険を繰り広げ、『ガンバの冒険』ばりのハムスターと接触したりして「おお、前回言ってたみたいに児童書っぽくなっている?」と途中まで思っていたのですが。主人公が小さくなった理由なんかが明らかになったりしてくると、ぞっとする物があってちょっとしたホラー。かわいい文体になってしまった主人公の語りとか、すっかりドウジョウにアタイする具合に。しかもアルジャーノンは狙ってますね。
2本目の話では、1巻でもちょっと示されていた『助手さん』が現場復帰するのでそれをお迎えにいくはずが、タイムスリップ(リープ?)現象に巻き込まれてしまう。そんな現象を引き起こした理由が、いかにも妖精さんらしいです。
あと、犬の正体は……ちょっとクトゥルーっぽい形容がついているシーンもありましたが、内容はおおむね予想通り。でも予想だにしない語呂合わせに腰砕けそうでしたん。
田中ロミオ氏といえば、PDMのマスターやってたり(成田良悟さんがそうでしたね)、エロゲのライターしていたり(氏の言い方を借りれば貿易商)で、ロミオゲーはその界隈では有名ですな。私はどっちもやってなかったのでもともとのロミオ節は知りませんが、人退1巻からしてその独特の語りは炸裂していて実に楽しい。個性的な文章っていいですよね。「なんでそこにその語彙!?」という。悪の親玉としては少々陳腐ながら、超語彙が豊富で饒舌な畜生とか。その一方で、さりげなく哲学的文化人類学的トークがあちこちに盛り込まれていて、なんだか「ロミオ」以外に分類不能な感じが漂っています。
それにしても、今回は謎の友人Yに関して伏線っぽいものが出てきたりしまして、これは3巻フラグですよねどう考えても。今からちょー楽しみっす。
……ちなみに、これ読んで『バナナ春巻き』が作りたくなったのですが、それを聞いた母が顔色を変えました。普通にあるお菓子なのに、母にはゲテモノに聞こえるようです。春巻きの皮、余っているんですけどねー。見識が狭いっていやん。