三家本礼『サタニスター』1〜3

「あたしを誰だと思ってる? このサタニスターに殺された時の恐怖を思い出させてあげようか!?」

サタニスター (1) (ぶんか社コミックス)

サタニスター (1) (ぶんか社コミックス)

サタニスター (2) (ぶんか社コミックス)

サタニスター (2) (ぶんか社コミックス)

サタニスター (3) (ぶんか社コミックス)

サタニスター (3) (ぶんか社コミックス)

 安藤純子(『ゾンビ屋れい子』イーヒン編冒頭参照)似のいじめられっこ・沢本いづみが相談した相手は、『悪魔寄りのシスター・サタニスター』だった……。神と悪魔の両方を象徴するダブルヘッド・クロスを胸に下げ、代々受け継いだ怨念のナックルで殺人鬼をぶちのめす怪力修道女のバイオレンスアクション!
 ただ、主人公である彼女が登場するのは結構遅く、1巻では半分くらいが宿敵となるであろう女殺人鬼・バルキリーのエピソード2本に占められています。掲載誌がホラーMということで、内容は立派にホラー。生き残りをかけたサバイバルゲームを仕掛け、楽しみながら人を殺すバルキリー。ある時は自殺志願者、ある時はたまたま居合わせただけな不幸な少女……。標的となった人々は、年頃の少女だろうが中年のおっさんだろうが、等しくウサギの着ぐるみを着せられてしまい、悪趣味な逃亡劇となります。もちろん死に方はスプラッター
 見開きの「まだ終わっちゃいないよォォォ〜〜〜〜〜ッ!!」は非常に迫力。ただ、時々人間の断面にトーンが貼ってあったりしてグロが制限されている部分もあります。ですが、血しぶき乱れ飛ぶシーンでも、一緒に塩飴や年金手帳が舞っているという、シュールな場面もあり。「クイズに3問正解したら見逃してあげる」と言って、バカボンのパパやはだゲンをクイズに出すシーンもあり、スプラッターギャグ漫画とも言い換えられそうです。
 さて、1巻はまだまだ前哨戦という趣きが強く、「天下一武闘大会! ただし参加者全員殺人鬼!」な、世界最強殺人鬼決定戦に参加してからが本題となります。この作品に登場する「殺人鬼」は、どいつもこいつも特殊な特技や能力を持った連中で、ミミズを腹に飼っていたり、電動ドリルを武器にしたり、はては変身したりとなんでもあり。メインキャラの一人となった墓井田鉄郎にいたっては機械人間(生身時代の姿はマスクをした豪人=いわば承太郎オマージュ)です。
 そんな連中に立ち向かうサタニスターの武器は、己が拳一つという男前っぷり。いじめられっこ・いづみも、彼女の助力を得て殺人鬼ハンター中学生となり、ナイスファイトを見せます。
 一巻で顔見せしたり、表紙に登場したりして、いかにも活躍しそうな気配を出しているキャラ達がさくさく死んでいくノリは、やはり三家本礼。そのへんは「何も考えずに書いてんのか?」といいう気分にもなりますが、ミカモンだから仕方ありません(って、オイ)。まあ、そんな整合性に欠ける点はもはや諦めておかないとどうにもしようがなく(そして、その点が気になって萎える以上に、読者を惹きつける強さがあります)。
 一巻では最後のページに『ゾンビ屋れい子』の人気キャラクター・百合川サキらしき人物の後姿があり、ファンサービスと思われていましたが、ホラーM1月号掲載分では、「皮裂ユリ」という名前で、鉄仮面をつけた百合川風のキャラが登場しており、ゾンビ屋世界とのリンクも気になるところです。