『タマラセ 彼女はキュートな撲殺魔』六塚光(角川スニーカー)

 武装錬金を読み終わって、『武器を作る超能力の話』という設定部分が通じるモノがあるなあ──という動機で読み始めたシリーズ。タイトルのタマラセは漢字では『魂裸醒』と書き、音と思いつきで作った造語だと思ったら、きっちり由来が設定してあって嬉しい驚き。俺はこういうのに弱いんだ。
 ただ、タマラセの由来であるダマラセ=黙らせ(神をも黙らせる力)が、一巻以降全くでなくなったのが少し寂しい。今三巻まで読み終わったんだが。
 内容は、一言で表すと超能力バトル物というわりとあるジャンル。大きな目新しさはないが、新人さんのデビュー作であるにも関わらず、作りが丁寧。まず物語の核となる超能力タマラセの設定が読者に理解しやすいよう段階的に説明されており、物語の進行もしっかり伏線を巡らしてはきっちりそれを回収する手堅いつくり。
 一冊だけでも結構纏っているが、巻を読み進めるとまた、キャラの作り込みやら何やらが分かって美味しい。「一巻を書いた時点でここまで考えていたのか」と──いやまあ、普通といえば普通かもしれないが、構成のまとまり具合や整合性が実に綺麗に出来ているのだから唸らせる。レンズと悪魔を何の気なしに読み始めたら、冒頭数十ページで「つまらん」と放り出しちゃったのに。
 またキャラクターの掛け合いやギャグは中々シュールな発想が多く、そこがツボにはまる人はますます愉しんで読める事だろう。私はツボにはまるってほどでもないが、結構好きだ。ニヤニヤして読める。桃太郎vsヴァンパイアとか。あとオッカムの剃刀についての嘘説明は『そんな奴はいねェ!』ってアフタヌーンの四コマを思い出すノリだった(いや、これは3巻の話だが)。
 作者独特のノリを持ちつつ、ズバ抜けたポイントはないけれど、手堅いまとまり方は良作といった趣き。あとの特徴としては、全体に漂う『ライトな重さ』。タマラセが本来は戸有村という日本の秘境に伝わる「秘中の秘」であるため、ライトノベルながら容赦ない人死にや拷問といった要素が、鬱すぎない程度に描写され、「命懸けの戦い」を演出している。それでいて、主人公が必要以上に葛藤したり、奇麗事を並べたりしていない(この辺、私が冒頭でタマラセを手に取るきっかけとなった『武装錬金』との大きな差異である。ぶそれんは少年ジャンプ掲載作という土壌もあったのだろうけれど、少年漫画のノリでありながら、青年漫画の重さと深さも同時に備えられる土壌がライトノベルというジャンルだと私は思う)。
 ちなみにキャラクタでは佐倉と長坂とつ──迅さんが好きです、ええ、はい。あと三千人さん、最近出番減って悲しいぜ。
 で、そんなタマラセの残りの巻(5巻と最終巻と短編集)を買いに行ったら、新シリーズのレンズと悪魔しか置いていませんでした。くそ、DDDも置かずにいまだ空の境界平積みにしてやがるくせに! コレだから田舎は!