大槻ケンヂ『大槻ケンヂ短編集 ゴスロリ幻想劇場』
- 作者: 大槻ケンヂ
- 出版社/メーカー: インデックスコミュニケーションズ
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
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連載となっているが作品それぞれにストーリー的繋がりはまったくない。唯一、『ユーシューカンの桜子さん』と『奥多摩学園心霊事件』の登場人物が繋がっているのみである。一つ一つが短いので、手軽に読むにはちょうどいい。私は、手軽に読もうとして結局全部読破してしまったのだけれど。
文体は御伽噺を語り聞かせるようなメルヘン調(ですますだったりする)と、女の子の一人称視点によるサバサバしたものの二つに大別されている。タイトルのゴスロリ・幻想というキーワードが示すような、おどろおどろした耽美な雰囲気はほぼないので、ゴスロリと聞いて敬遠する人も、大槻ケンヂに反応出来るなら手に取ってみるといいだろう。
本作で書かれているのは、『ゴシックロリターファッションをする女の子』と、『ロマンチックな狂気』である。殆ど全ての作品に、ゴスロリファッションの女の子が登場する(中には登場しないものもあるが。ギター泥棒とか)。が、その女の子達はおしゃれが大好きなだけで、特別奇矯な心象世界に埋没しているわけではなく、あくまで『普通の女の子達』である。
一方、本書の巻頭カラーページを始めあちこちに、ゴスロリ服のモデル写真が掲載されている。私は別に気にしないが、苦手な方は苦手かもしれない。が、一方『ステーシー』外伝(これ単体だけでも読める)『ステーシー異聞・再殺部隊隊長の回想』もあるので、オーケンファンには読んでもらいたい。
私はオーケンファンとしてはやっとファン歴一年というところで、まだまだ俄なのだけど(まあ、『ステーシー』や『新興宗教オモイデ教』、『くるぐる使い』は数年前に読んだのだが、その頃はファンとはちょっと違う)。けれど、『ゴスロリ・バイブル』店長が語る電波や、ゴンスケが別れの際にこっそり愛ちゃんに囁いた言葉、『東京ドズニーランド』などの文章センスには、明らかにオーケンの歌詞世界が溢れていると確信しております。
まあファンの方なら、私がここで「オーケンファンならオススメ!」と言わないまでも普通に読んでいるような気がする。だがまあもう一言付け加えるなら、「猫が好きな方は『二度寝姫とモカ』をご覧ください」ってなもんでしょうか。
オマケ:なお、本作では『決戦ドレスは紅茶の後で』の「まるでカンフー映画で見るすげ〜バトルそのもの!」が一番笑ってしまいました。