読切短編小説『箱の中のヒト 著/鞘鉄トウ』原稿用紙換算30枚(http://magazine.kairou.com/07/novel/maninbox.html)

・読み切り小説1番バッター、編集長いわく読み切りで1番面白かった作品、とのこと。作者の鞘鉄さん(さやがね、と読みます)は、今回が初参加となりますが、以前から回廊の感想なども書かれており、縁ある方だったりします(確か)。
>〜おお、コワ。」
 うむ……1.のところのソウ兄ちゃんの台詞にあるんだが、これは削除し忘れだろうか(句読点)。
・空に穴が開いている世界で、主人公「ぼく」と、「ソウ兄ちゃん」の会話で語られていく世界観。この世界の成り立ちと、それによって発生した世界の終わり。
 滅び行く世界の話だが、その題材に対して物語の雰囲気は、悲壮感というよりは寂しさや静けさが漂う物になっている。その静けさは諦観という事なのか、乾いた安寧なのか、救いのなさの裏返しなのか、あるいは実感がない故のむなしい冷静なのか。
・俗な言い方をすると、セカイ系作品という事になるのだろうか? 終わり行く世界と、それにともなう主人公と年長の友人の別れ、そして思い出が主軸になっているようで、世界観自体はSF設定ながら、一つの青春小説として成立しているようにも思える。
・SF設定自体は面白いし、つまらないという事はないし、語りかけている要素が弱いという事もないのだが、私にはどこか物足りない感もあった作品。30Pほどだったのだし、もう少し増量してしまっても良かったのではないか……と思うのだが、これで完成しているような気もする。うーん、個人的嗜好の問題かな。