桜庭一樹『少女には向かない職業』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)
ひぐらし罪滅ぼし編より、少年犯罪や少女による殺人という題材に興味が沸いたので、その関連からこの作品を手に取った次第。で、本日密林よりシュヴァリエ5巻と一緒に届いた。もう一冊『ベルリン陥落』があるけど後回しだ(その前に『ヒトラーの秘密警察』が読みかけだし)。
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/09/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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桜庭一樹の作品はこれが初めてなのだが、既刊のタイトルと粗筋だけからでも類推出来るように、本作で書かれているのはあくまで『少女』であり、ドロドロした犯罪小説でもない。一人称で書かれた、さばさばとした文体もそれを示している。
楽しいようで処々気を使う、ドロドロとさっぱりが同居した友人関係。破れるほのかな恋心と、知らず知らずのうちに深まる学級での孤立。露骨に主人公を荷物扱いする母親との関係。友達になりたいあの子への、危ういアプローチ。孤独な友人から受ける期待と、それに応えたいがための行為。暗く重い事柄の展開が連続するが、読んでいてそれが重く沈んでくる事のない、さっぱり感がなぜかある。
人によってはそこが「浅い」「薄い」と言われるのかもしれないが、少女を書く事がこの作品の主旨ならば、このくらいがちょうど良いと思える。
ただ、『スパルタの狐』など、人の良い警官によるお説教などは、鼻につく部分はあった。説教自体が一般論で締められている部分もあったから、余計そう感じられてしまう。
本作では、一章の終わりにある、二人の少女が泣きながら「死んじゃえ、死んじゃえ」と繰り返し唱えるシーンが一番印象に残った。多少間接的ながらに手をくだした相手が、緩慢に死んでいくのを見ながら、もう死んでしまえと、とどめを刺すわけでもなく泣き叫ぶ。
締めは、ぶつ切りにしたようなそっけない終わり方で、物足りなさを感じさせるが、よく纏っていると思った。ある意味、ああ、やはりそういう終わりになってしまうのだな、という残念さはあったが、扱う題材上仕方なかったのかもしれない。ただ、エンディングに田中は出したほうが良かった気もするが。
機会が出来たら(積読の量によっては)、また桜庭一樹は読んでみたい。さしあたって『赤朽葉家』か『七竃』あたり。