入江君人『神さまのいない日曜日II』
(頼むから……俺たちの事を、分からなくなってくれ……)
- 作者: 入江君人,茨乃
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2010/05/20
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 119回
- この商品を含むブログ (32件) を見る
今回は世界唯一の死者国家『死霊都市オルタス』を舞台にしたお話。なんか前作よりさらに、アイの子供としての可愛さが気合い入れて描写されてますねー。オルタス観光のくだりとか。
悪疫(ボックス)&強攻(レックス)ってあしゅら男爵……?
一巻の話は「死者は土の下で安らかに眠るべき」ということを全力で訴えている作りでした。
不死身だけど幸せに死にたいハンプニー。今まで育ててくれた人たちに騙されていたことを知り、それを悪と断じたアイ。いかにも葬るべき悪として振る舞うヒコたち死者連中。死んだ妻と暮らしていたユリーや、正しき墓守としてのスカー。
でも二巻目で「アイがどうするでもなく既に救われている」死者の国オルタスとその国民が登場し、一巻とは別の価値観が持ち込まれて物語に奥行きが出てきました。
前回、ネクロポリスだった自分の村を否定したアイが、今度は更に規模のでかいネクロポリスへ突っ込んでいくことから、容赦なくアイの「夢」について批判が出てきます。
アイが13歳なら、14歳なら、15歳なら、きっと直面しなきゃならなかった問題。当然指摘されるべきだったであろう考えの浅さや、彼女の夢で傷つく人や物の可能性。でも、それを、12歳の彼女に言うあたりが、とても容赦ない。
まあ飴と鞭と言いますか、飴として(というとちょっと違うが)アイには初めてのお友達が出来ます。アイとはまた好対照のキャラとして造形され、異なる回答を突きつけました。
ハンプニーはオルタスのことを知っていたのか、知っていたとしてさすがに手出しは控えていたのか気になる所ではありますが。個人が一国の超武力に挑むのはいくら不死身でも罵迦のやることだしなあ……。
前作は世界観もかなりおぼろげだったんですが、今作の舞台であるオルタスは逆に細かく作り込まれていますね。ライオンくんの同級生や、キリコが語った歴史の断片、町並み等々。
前作だといまいち目立たなかったユリーが、きちんとしっかりした大人として振る舞っているのはなにげに嬉しい点。ラノベじゃないがしろにされがちな立場でがんばってます。